抄録
地球全体の一次生産量に大きく貢献している海洋性珪藻類は、CO2感知機構を有していると考えられているが、その詳細な分子メカニズムは未解明である。現在までに、CO2応答性プロモーターであるPptca1配列の解析が行われ、転写開始点上流70bpまでにCO2応答に重要な配列があることが分かっている。この領域には2つのcAMP応答性配列(CRE1:-70~-63、CRE2:-21~-14)とcAMPに関連した機能を有することが知られているp300結合部位(-52~-46)が存在することが分かっている。CRE1についてはcAMPシグナルの影響を受けることが確認されている。本研究では、Pptca1のシスエレメントを精査し、CO2応答性発現制御の分子機構を明らかにすることを目的としている。これまでに、uidAレポーター遺伝子に連結したptca1コアプロモーター改変コンストラクトを海洋性珪藻に導入し、形質転換株を5%及び大気レベルCO2環境下に順化し、uidAレポーターアッセイを行った。その結果、現在までに分かっていたシスエレメントに加えて1つの新たなCO2応答性配列の候補が見出された。CRE1以外の各シスエレメントのcAMPとの関わり及びシスエレメント間の相互作用について検討した結果を報告する。