抄録
光合成細菌Rhodobacter sphaeroides f. sp. denitrificansのDMSO (dimetyl sulfoxide) 呼吸系のdmsCBAオペロンの転写はニ成分制御系のDmsS/DmsRにより制御されている。一般にセンサーキナーゼはN末側から膜貫通ドメイン、PASドメイン、リン酸リレーに関与するドメインを持ち、細胞外の領域が環境のシグナルを認識すると考えられている。しかし、LacZ活性による解析からセンサーキナーゼDmsSは細胞外の領域がなく細胞膜の細胞質側に局在するタンパク質であることが示された。また、これらの膜結合領域はセンシング機能に必要で特にC末端側が重要であることが示されていた。
本研究ではPhoA活性によるDmsSのトポロジーの確認とDMSO呼吸のシグナルについて解析を行った。7種類のphoA融合遺伝子を持つ光合成細菌を構築した。ペリプラズム、細胞膜、細胞質に分画しPhoA活性を測定しDmsSのトポロジーをlacZの結果と比較した。一方、DMSOからDMSへの還元がおこらないdmsA遺伝子破壊株を構築し、dmsC-lacZ融合遺伝子を接合導入しLacZ活性を測定した。野生株、dmsA遺伝子破壊株におけるLacZ活性に変化はなかった。DMSO存在下では活性が10倍に上昇したが、DMS存在下でも活性が3倍に上昇した。これはDMSが酸化され少量のDMSOが生成したものであると考えられた。以上の結果から、DmsSはDMSをセンスしているのではなく、DMSOのみをシグナルとしていることが示された。