抄録
葉緑体は独自のゲノムを持っているが、細胞内共生の過程で葉緑体が機能するためのタンパク質遺伝子の多くは細胞核へと移行している。本研究では、比較ゲノムのツールであるGclustプログラムによって予想された細胞内共生起源と考えられる葉緑体タンパク質の機能解析を、シロイヌナズナを用いて行った結果を報告する。Gclustプログラムは多種の生物間での相同タンパク質グループを様々な条件に従って抽出できるプログラムである。このプログラムを用いて得られたタンパク質群のグループ名をChloroplast Proteins of Endosymbiont Originの頭文字をとってCPRENDO(CPR)と名付け、CPRグループに含まれるタンパク質の機能解析を行った。CPR中のシロイヌナズナのタンパク質56個のうち、53個が葉緑体に局在することがGFPとの融合タンパク質を用いた実験から確かめられた。CPRに含まれるタンパク質をコードする遺伝子破壊株にPAMを用いた解析を行ったところ、多くの変異株でNPQの上昇が観察され熱放散系の異常が示唆された。また、このうちycf65とycf20は可視的な表現型を示した。ycf65は子葉がペールグリーンになり、ycf20は葉が斑入りになる。これらの変異株ではFv/Fmが減少するなど光化学系の異常が観察された。得られた変異株についてさらに詳しい解析を行っていく予定である。