日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ピコ秒蛍光寿命測定による乾燥地衣類の多様な光阻害防御機構の発見とメカニズムの解明
*小村 理行岩崎 郁子伊藤 繁
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p. 657

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抄録
地衣類は菌類中に藻類が共生して光独立栄養的に生育し、乾燥すると光合成電子伝達系を停止し、水分吸収後は迅速に電子伝達を再開することで乾燥に耐える。乾燥時は吸収した光エネルギーを熱に変換し、過剰な酸化力・還元力の蓄積による光化学系の光阻害を防ぐと推定されてきた。しかし、この物理的メカニズムは不明である。地衣類20種類を採集し、乾燥時のアンテナ色素系と電子伝達系のふるまいを検討した。77Kでの定常蛍光スペクトル測定から、地衣類の光合成系を3種類(シアノ型、緑藻型1、緑藻型2)に分類できることを見出した。更にピコ秒蛍光寿命測定から、シアノ型、緑藻型1は乾燥時の光化学系IIの蛍光寿命が5から10倍速くなり、未知の蛍光消光機構により光化学系IIを保護することがわかった。蛍光消光は水添加後30秒以内に解消された。他の1種類(緑藻型2)は蛍光消光機構をもたず、アンテナサイズを小さくすることで光化学系IIを光阻害から保護した。いずれも光化学系Iアンテナ系には大きな変化がなかった。乾燥細胞のPAM測定では光誘起によるQaの還元は観測されなかったが、ナノ秒領域での遅延蛍光が観測される事から、P680からフェオフィチンへの電子移動が一部確認された。また、ミリ秒領域の遅延蛍光や熱発光測定を行い、光化学系IIの電子伝達系について検討した。これらの結果を元に、乾燥時に地衣類が光阻害を防ぐメカニズムを考察する。
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© 2007 日本植物生理学会
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