抄録
夜温が栄養生長期のイネの乾物生産に与える影響を明らかにするため、夜温のみ異なる環境下で植物を生育させ(低夜温区:17℃、標準区:22℃、高夜温区:27℃)、個体の乾物生産量、成長解析、窒素含量および炭水化物量、および個体当たりのCO2ガス交換速度を比較した。夜温処理は、播種後21日目から63日目まで屋内型人工気象室を用いて行った。昼温は27℃、光条件は1000 μmol m-2 s-1、相対湿度は60 %とした。
乾物生産量は高夜温区で最も高かった。播種後63日目の乾物あたり呼吸速度は高夜温区で大きかったが、光合成速度も大きかったため、乾物あたり正味の同化量は最も多かった。成長解析の結果から、相対成長速度は播種後21-42日目の生育初期のみ有意に異なり、夜温の高い方が増加した。また、高夜温区では生育初期のLARも有意に増加していたことから、相対成長速度の向上は葉面積の増加によるものであることが示された。播種後42日目の個体では、葉身への乾物および窒素の分配割合は、夜温が高くなるに従い増加する傾向が認められた。一方、播種後42日目における葉身と葉鞘の乾物あたりの炭水化物量は、夜温の高い方が減少する傾向が認められた。これらのことから、乾物生産は高夜温区で最も高く、それは生育初期のLARが大きいことや葉への窒素分配と乾物分配が大きいことなどによった。