抄録
シロイヌナズナのAtC401遺伝子は、光周性花成誘導に関連するプロテインキナーゼをコードし、転写レベルで暗期増加型の概日リズム発現を示す。AtC401の最小プロモーターは、73 bpの5’-非翻訳領域と13 bpのイニシエーター領域のみで明確な概日リズムを示し、TATA-boxを欠く特異な構造である。本研究では、AtC401プロモーターの概日リズム発現に重要なシス配列とトランス因子の同定を行い、転写制御機構の解明を目的とした。AtC401最小プロモーターは、シス配列の候補と考えられるGATA配列4つとCCA1結合様配列3つを含む。そこで、最小プロモーター (d5,85 bp)を対照とし、これにGATA配列に変異を加えたΔG、CCA1結合様配列に変異を加えたΔAを作製し、その下流にホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc+)を連結したコンストラクトを作製した。これらを導入した形質転換植物を用いてレポーター解析を行った結果、ΔG::luc+では発現レベルは下がるが概日リズムは維持され、ΔA::luc+では発現レベルは変わらないが無周期になった。さらに、ゲルシフトアッセイを行い、このCCA1結合様配列に大腸菌で発現したCCA1タンパク質が結合することを確認した。これらの結果、AtC401プロモーターでは、CCA1がトランス因子として5’-非翻訳領域に結合して概日リズム発現制御を行う可能性が示唆された。