抄録
コムギ穀粒の硬軟質性にはHa(Hardness)遺伝子座が関与しており、その領域にはpuroindoline-a (Pina)、puroindoline-b (Pinb)、grain-softness-protein-1 (GSP-1)という3種類の遺伝子が存在している。
本研究では、コムギHa遺伝子座領域のPinaとGSP-1を含む巨大ゲノムDNA断片をアグロバクテリウム法でイネへ導入した。作出された形質転換イネ4系統について、Fiber-FISH法により導入遺伝子座を可視化したところ、全ての系統において様々な再配列が起きていることが明らかになったが(Nakano et al. 2005)、PinaとGSP-1の両遺伝子を保持していたため、後代を展開し、導入遺伝子座をホモで保持しているT2個体を選抜した。ホモT2個体は、サザンブロット法とFISH法により確認し、そのT3種子の胚乳において導入遺伝子の発現をRT-PCRとウェスタンブロット分析により調べた。その結果、全ての系統において導入遺伝子の胚乳での発現が確認され、巨大ゲノムDNA断片として導入したコムギ遺伝子が形質転換イネ中で発現していることが分かった。形質転換イネ穀粒においてコムギHa遺伝子群がどのように機能しているかを、走査型電子顕微鏡などを用いて解析を行っている。