抄録
高等植物の根は、根端分裂組織に由来する細胞によって形成される。根端分裂組織では、静止中心(QC)とよばれる分裂活性の低い細胞群に接して幹細胞が存在する。それぞれの幹細胞は一定のパターンで細胞分裂し、QCより基部側組織(表皮、皮層/内皮、中心柱)、もしくは頂端側組織(コルメラ)を形成する細胞を供給する。これら幹細胞の維持機構については、未だわかっていない点が多い。過去の実験から、根の組織形成には相補作用があることが分かっている。すなわち、幹細胞が人為的に破壊されても他組織の細胞が流入し、機能的に相補する。またそのため、細胞パターンの乱れが生じることがある。この事は幹細胞を正常に維持できない変異体においても根の生長には顕著な異常を示さず、むしろ相補作用によって細胞パターンに異常を示す事を示唆する。
我々は根端分裂組織における幹細胞維持の分子機構を明らかにするため、約2400個体の変異原処理したシロイヌナズナM2植物から、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、根端部の細胞パターンに異常をもつ複数の変異体を単離した。これらのうち、中心柱の細胞増殖に異常をもつ5GF-17変異体について原因遺伝子をポジショナルクローニグ法により同定したところ、WD40モチーフをもつ新規タンパク質をコードしていた。本発表において、これらの変異体の表現型を報告し、原因遺伝子の機能について討論したい。