抄録
我々は、人工転写活性化因子GAL4:VP16 (GV)とその結合配列UASを利用したアクティベーションタギング法を用いて、シロイヌナズナの根のパターン形成に異常を示すUAS-tagged root patterning : (urp)変異体をこれまでに8つ単離している。
これらのうち、urp4-1Dとurp5-1Dはどちらも根の側部根冠及び表皮細胞の分裂が亢進されるという表現型を示す。2つの変異体では、UASは植物に特有な転写因子様タンパク質をコードする相同な遺伝子の5'上流に挿入されていた。さらに、表現型とUASの挿入が共分離することや、再形質転換体実験から、これらの遺伝子が原因遺伝子であることを同定した。また、植物体においてGFP融合タンパク質は核局在を示した。UAS-URP4の再形質転換体は元の変異体より強い表現型を示し、発現組織はカルス様となった。この形質転換体ではカルス特異的に発現する遺伝子が誘導されており、また野生型植物のカルスでURP4のプロモーターは転写活性を示した。さらに、URP4とURP5の過剰発現体においては他の相同遺伝子の発現も促進されていることから、遺伝子ファミリー間による相互の発現制御が生じている可能性が示唆された。以上の結果はURP4とURP5が細胞の増殖を正に制御、あるいは細胞分化を抑制する機能を持つことを示唆している。現在、マイクロアレイ解析による標的遺伝子の同定など、さらに詳細な解析を進めている。