抄録
オーキシンの極性輸送は、器官形成、胚の軸形成、維管束のパターン形成や屈性反応など、高等植物の生活環の様々な場面で重要な働きを示す。しかし、その出発点である生合成については、いまだほとんど分かっていない。我々はオーキシンの出発点を同定することを目的として、これまでにオーキシン生合成に関与することが報告されている遺伝子の発現解析を胚に対して行った。CYP79B2, CYP79B3, YUCCA1, 2, 3, 4, NIT1, 2, 3, AAO1、計10遺伝子について解析を行った。その結果、胚発生期において、これらの遺伝子が時期および組織特異的に発現することが分かった。その中でも特に、オーキシン生合成の律速因子YUCCA遺伝子群の発現パターンは、これまでに想定されているオーキシン生合成部位と極めて一致するものであった。次に、YUCCA遺伝子群の機能を調べるため、機能欠失変異体の表現型解析を行った。いずれのyucca単独変異体は表現型を示さず、機能重複的に働いていることが示唆された。多重変異体を作成したところ、ある組み合わせで胚性器官および花器官の形成に異常が観察された。これらのことから、YUCCA遺伝子群がオーキシン極性輸送の起点として機能する可能性が示唆された。