抄録
光受容体、フィトクロム、クリプトクロム、フォトトロピンは、植物の発達・生育の様々な局面を制御している。胚軸の光屈性ではフォトトロピンが主要な役割を担っているが、フィトクロムやクリプトクロムもこれの調節に関わるものと考えられている。我々は、胚軸の光屈性におけるフィトクロムの機能を調べるために、赤色光照射によって胚軸屈曲が促進される突然変異体、flabbyを単離した。ポジショナルクローニングの結果、原因遺伝子はオーキシンの排出に関わるABCトランスポーター、PGP19/ MDR1をコードすることが判明した。作成した phyA phyB flabby三重変異体では、赤色光による胚軸屈曲が抑制されていたことから、フィトクロムには胚軸屈曲を促進する効果があり、PGP19はこの効果に対し抑制的に機能することが示された。さらに、赤色光照射により活性化したフィトクロムは、胚軸上部でのPGP19の蓄積を減少させ、胚軸の求基的なオーキシン輸送活性を減少させた。よって、フィトクロムによるオーキシン輸送制御は、胚軸の光屈性に重要な役割を担う事が示唆された。青色光照射により phot1 phot2 flabby三重変異体も胚軸屈曲の促進を示し、胚軸中PGP19の蓄積もクリプトクロム依存的に減少した。よって、クリプトクロムもフィトクロムと同様に胚軸屈曲を制御するものと考えられた。これらの結果と合わせて、PGP19を介したNPAの効果と、 pgp1 pgp19二重変異株の表現型についても報告する。