抄録
植物ホルモンは、低濃度で多様な応答を調節するシグナル物質として知られている。植物ホルモンの生理作用を明らかにする研究の一環として、これまでにさまざまな方法でその内生量が測定されてきた。代表的なものはGC-EI-MS である。一方、最近、LC-ESI-MS/MSによる微量成分の分析が盛んに行われている。この手法の特徴は、GC-EI-MS による分析に比べ精製が簡便である場合が多く、誘導体化の必要がないことで、微量成分分析の新しい手法として一般的になりつつある。しかしながら、ESIではEIに比べてイオン化時に存在する侠雑物の影響が大きく、目的化合物が相対的に少ない場合、イオン化が妨げられ十分な感度が得られない(イオンサプレッション)ため、ESI に適した精製が必要となる。
我々は、LC-ESI-MS/MSによる全ホルモンの一斉分析系構築を目的とした研究を行っており、今回はそれらのうちでジベレリン、アブシジン酸、インドール-3-酢酸、ジャスモン酸、サリチル酸について報告する。現在までに、個別のホルモンについて高感度検出に必要とされる簡便な精製法を確立しており、GC-EI-MSで一般的に必要とされる量の1/10から1/1000程度で、予備精製にHPLCを用いない分析が可能となった。
上記に加え、その他の植物ホルモンの分析や、100 mg 程度のサンプルからの一斉分析法についても述べる予定である。