抄録
我々は、クラスリンが紡錘体の形成に重要な役割を果たしていることを示してきた。更に紡錘体形成におけるクラスリンの役割を明らかにするために、クラスリン軽鎖をYFPで蛍光標識した細胞株を作製し経時観察を行った。分裂中期では、ゴルジ体と考えられるドット状のシグナルが紡錘体の周囲に存在し、それと同時に紡錘体中にもシグナルが観察された。ゴルジ機能阻害剤ブレフェルジンAで分裂中期の細胞を処理するとドット状のシグナルは消失したが、紡錘体中のシグナルは残っていた。このシグナルは微小管阻害剤で処理すると消失することから、その局在は紡錘体微小管に依存していることが明らかになった。
また我々は、クラスリン重鎖のC末端部分を発現させると紡錘体形成やフラグモプラストの形態が異常になることを示していた。今回、GFP-チューブリンが発現しているBY-2細胞株(BY-GT16細胞)にクラスリン重鎖のC末端部分を発現させ、分裂期細胞における微小管の動態の経時観察を行った。異常な分裂をする細胞では、分裂後期において紡錘体が異常になることがわかった。また正常に分裂が進行する細胞においても、分裂中期の時期がコントロールに比べ約2倍近く長くなっていた。以上のことより、クラスリンが紡錘体の安定化にかかわっていることが示唆された。