日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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ヒメツリガネゴケのミトコンドリアゲノム解析による陸上植物のミトコンドリア進化の解析
*寺沢 公宏小田原 真樹壁谷 如洋菊川 達彦関根 靖彦藤原 誠佐藤 直樹
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p. 751

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抄録
陸上植物の誕生は植物の進化において重要なステップであり、コケ植物は初期の陸上植物であると考えられている。コケ植物と維管束植物と緑藻の関係を調べることは、陸上植物の初期の進化を再建する上で重要である。今回私たちは、セン類ヒメツリガネゴケのミトコンドリアゲノムの完全な塩基配列 (105,340 bp)を決定した。これまでに全配列が報告されている陸上植物のミトコンドリアゲノムの中で最も小さく、3個のrRNA、24個のtRNAと42個のタンパク質をコードする遺伝子を含んでいた。ミトコンドリアゲノムの全体的な構造は、ヒメツリガネゴケ、タイ類のゼニゴケ(Marchantia polymorpha)、車軸藻の(Chara vulgaris)と(Chaetosphaeridium globosum)で比較すると似ていたが、被子植物や緑藻とはシンテニーが見られなかった。系統解析の結果、ヒメツリガネゴケとゼニゴケが被子植物の姉妹群となった。イントロンの比較から、ゼニゴケでは、陸上植物の祖先で一度挿入されたイントロンが失われて、新しいイントロンがゼニゴケ類の進化の間に挿入されたと考えられた。さらに、顕花植物で見られるゲノムの多分子構造がコケ植物類にはないことも示唆された。これらの結果から、ヒメツリガネゴケのミトコンドリアゲノムが陸上植物のミトコンドリアゲノムの原型の特色を保持していると考えられた。
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© 2007 日本植物生理学会
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