抄録
マイクロボディ(MB)と葉緑体を細胞当り1個ずつ持つクレブソルミディウムのMBの分裂と分配過程を,連続切片の電顕観察によって3次元的に解析した.間期には,棒状のMBが筒型の細胞の短軸方向(将来の紡錘体軸に対して垂直)に配向し,その一端に中心小体対が近接していた.前期では,MBが伸長し,かつ分岐するだけでなく,細胞の長軸方向に向きを変えた.複製された中心小体対はMBの両端のごく近傍に位置していた.中期には,伸長したMBは開放型紡錘体の側面に沿うように位置し,その両端は紡錘体極の中心小体対にそれぞれ近接していた.終期では,2個の娘核は,中心小体に先導されるかのように細胞の両端にそれぞれ移動し, MBはさらに伸張した.MBの両端は,この時期においても中心小体対に近接していた.MBの分裂は少なくとも細胞質分裂の初期には開始していなかった.従って,MBの分裂は細胞質分裂の完了と同時かその直前に行われると考えられる.細胞分裂後,核が細胞の端から中心小体対を伴って中央にもどる際に,MBもその一端が中心小体対に近接した状態で中央に戻るとともに,細胞の短軸方向に向きを変えた.細胞周期全体においてMBは中心小体対と常に近接しており,また分裂期においては多数の微小管がMBに沿うように配置していた.以上の観察結果は,MBの配向の変化と分裂および分配に中心小体と微小管が関与していることを示唆している.