日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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コムギ芽生え細胞壁のフェノール化合物代謝におけるシュウ酸酸化酵素の役割
*若林 和幸曽我 康一保尊 隆享
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p. 769

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抄録
コムギの発芽初期過程に特徴的なタンパク質として単離されたgerminは、シュウ酸酸化酵素であり、細胞壁中に分泌されることが示されている。シュウ酸酸化酵素はシュウ酸を分解して過酸化水素を生成することから、細胞壁中のペルオキシダーゼの活性に影響し、細胞壁のフェノール化合物の代謝調節に関与する可能性が考えられている。本研究ではコムギ芽生えを用いて、この可能性について検討した。先ず、染色法により芽生えのシュウ酸酸化酵素活性を調べたところ、細胞壁が強く染色され、また、シュートでも根と同様の強い活性が見られた。次に、播種後3日目のシュートから活性細胞壁標品を調製し、シュウ酸あるいは過酸化水素を含んだ溶液中で処理した後、弱アルカリ溶液で細胞壁から抽出されるエステル結合性のフェノール化合物量を調べた。その結果、この抽出画分に含まれるフェノール化合物の大半は、フェルラ酸とその重合体であるジフェルラ酸であり、シュウ酸または過酸化水素処理により同程度にジフェルラ酸量が増加した。従って、細胞壁のシュウ酸酸化酵素は、過酸化水素を生成・供給することでペルオキシダーゼの活性を増加させて、細胞壁内でのフェルラ酸のカップリング反応を促進すると考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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