日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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硫黄欠乏応答とクロロフィル合成の両方に異常を示すシロイヌナズナ変異株の解析
*井出 曜子鈴井(木村) 智子田中 寛藤原 徹
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p. 785

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抄録
硫黄欠乏に応じてGFPが発現する形質転換シロイヌナズナを変異原処理し、硫黄栄養条件に応じた転写制御に異常の見られる変異株の単離、解析を行ってきた。今回は硫黄欠乏応答とクロロフィルの合成が共に減少した3つの新たな変異株について報告する。定量的RT-PCRの結果、これらの変異株では硫黄同化経路において重要な硫黄欠乏応答性遺伝子であるAPS還元酵素(APR1)、硫酸トランスポーター(Sultr4;2)、セリンアセチル転移酵素(Serat3;2)の発現が硫黄欠乏条件でどれも野生型株に比べて減少していた。原因遺伝子をマッピングした結果、フェレドキシン依存型グルタミン酸合成酵素(GLU1)、プラスチドRNA ポリメラーゼのシグマ因子(SIG2)、Mg-キレーターゼIサブユニット(CHLI1)の3つの遺伝子にそれぞれ変異が見つかった。これらの遺伝子については、欠損によりクロロフィル前躯体の合成が阻害されクロロシスになることが既に知られていたが、今回の解析により、硫黄欠乏応答にもこれらの遺伝子が関与することが新たに示唆された。クロロフィル合成経路は、光合成関連遺伝子の発現制御に関わることが既に報告されているが、硫黄代謝や硫黄欠乏応答性遺伝子の発現制御においても重要な働きを担っている可能性がある。
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© 2007 日本植物生理学会
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