日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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遺伝子の再導入によるコサプレッションからの回復
*平井 清華福島 史恵児玉 浩明
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p. 786

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抄録
細胞内で特定のRNAが過剰に蓄積するとRNAサイレンシングが誘発されるというRNA閾値説は、コサプレッションの誘発原因説として考えられている。本研究において、α-リノレン酸の合成を触媒するタバコ小胞体局在型ω-3脂肪酸不飽和化酵素遺伝子(NtFAD3)のコサプレッション株に、さらにNtFAD3遺伝子を含むコンストラクトを多重導入したところ、α-リノレン酸含量が増加した株が得られた。NtFAD3コサプレッション株は本来NtFAD3遺伝子を過剰発現を目的として導入したところ導入遺伝子と内在性遺伝子ともに発現が抑制されてしまった株であるので、上記のα-リノレン酸含量が増加した株はrevertant株と呼ぶ事ができる。revertant株では、導入遺伝子のコピー数が増える事で過剰発現の表現型に戻ったことになる。この現象の原因を調べるため、NtFAD3コサプレッション株にプロモーター配列のヘアピンコンストラクトを導入したところ、一部にα-リノレン酸含量が増加し過剰発現した系統が得られた。つまり、プロモーター配列に対するヘアピンRNAのを転写によって、標的プロモーター配列がメチル化され、導入遺伝子の転写活性が低下すると、コサプレッションを誘発する細胞内のNtFAD3転写産物濃度が閾値を下回ったため、残存するNtFAD3 mRNAによる過剰発現が成立したと考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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