日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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コムギ無細胞翻訳系を用いたアロゲン酸デヒドラターゼの機能解析
*笠井 光治大林 佑規山田 哲也菅野 拓也若狭 暁戸澤 譲
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p. 809

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抄録
アロゲン酸デヒドラターゼ(ADT)は植物におけるフェニルアラニン(Phe)生合成の最終段階を触媒する酵素である。我々はイネ変異体、MTR1株の5-メチルトリプトファン抵抗性及びフェニルアラニン過剰蓄積表現の原因遺伝子として、バクテリアのプレフェン酸デヒドラターゼ相同遺伝子(OsPDTH)を見いだし、小麦胚芽無細胞タンパク質合成系を用いた機能解析により、OsPDTHがADT活性を有することを明らかにした。これは植物のADTを同定した初めての例である。エンドウ単離葉緑体を用いた葉緑体移行試験から、OsPDTHは葉緑体移行し成熟型にプロセスされるタンパク質であることが示された。カイネティクス解析により、成熟OsPDTHはアロゲン酸に対しプレフェン酸と比較して10倍以上の基質親和性を示した。さらにOsPDTHはPheによるフィードバック制御を受けており、MTR1株由来の変異型酵素ではフィードバック阻害の感受性が約9倍低下していることが判明した。さらに様々なアミノ酸およびそのアナログに対する感受性試験から、同変異はフェニルアラニンおよびその類縁体に対する感受性に対し特異的に影響を及ぼしており、チロシンおよびメチオニンによる酵素活性の増大には影響がないことが明らかになった。以上の結果から、ADTは遊離Phe濃度を制御しており、変異株MTR1におけるPhe過剰蓄積は、Pheによるフィードバック調節が十分に機能していないことに起因するものと結論づけた。
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© 2007 日本植物生理学会
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