抄録
先に精製したトウモロコシアセチルコリンエステラーゼ(maize AChE)は42-44kDaのポリペプチドからなる88kDaの二量体であった.完全長cDNAは,1471bpからなり397残基のタンパク質をコードしていた.maize AChE遺伝子(maize AChE)と相同性を有する遺伝子は,植物界に広く発現しており,とくに単子葉植物において高い(92-64%)相同性が認められた.それに対し双子葉植物での相同性は相対的に低かった(57-53%).このことから,双子葉植物におけるAChEの構造および特性が単子葉植物のAChEとは異なっていることが推測された.本報では,高いAChE活性を有するマメ科植物サイラトロから,AChEを精製し,そのcDNA配列を同定した.サイラトロAChE(siratro AChE)は,41-42kDaのポリペプチドからなる125kDaの三量体であった.完全長cDNAは,1441bpからなり384残基のタンパク質をコードしていた.また,ダイズにおいて90%の高い相同性遺伝子が認められたが,maize AChEとの相同性は45%と低かった.これらのことから,siratro AChEとmaize AChEでは,一次構造およびサブユニット構造に差異が認められた.一方,siratro AChEとmaize AChEにおける酵素特性の比較ではほとんど差異がなかった.