日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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酵素の立体構造から見たモノグルコシダーゼからジグリコシダーゼへの分子進化
*齊野 廣道水谷 正治平竹 潤清水 哲也加藤 博章坂田 完三
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p. 814

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抄録
ジグリコシダーゼは二糖配糖体を二糖とアグリコンに加水分解する酵素である。ジグリコシダーゼはグリコシダーゼファミリー 1 に属しており、植物のモノグルコシダーゼである β-グルコシダーゼもこのファミリー1 に分類される。植物の β-グルコシダーゼは単糖配糖体を加水分解し、生体防御など様々な生理活性を持つアグリコンを放出する。グルコースの六位水酸基にさらに単糖が結合した二糖配糖体も多くの植物から報告されており、ジグリコシダーゼも植物界に広く分布していると考えられる。ジグリコシダーゼは β-グルコシダーゼと 50 % 以上の高い相同性を示すことから、β-グルコシダーゼから進化したと考えられる。その進化過程において、酵素のどのような構造変化が二糖特異性の獲得につながったのかを X 線結晶構造解析によって明らかにした。ジグリコシダーゼの一種である β-プリメベロシダーゼ (チャ樹由来) に基質アナログ阻害剤が結合した結晶を調整し 1.8 Å の分解能で構造解析した。その結果、活性残基とグルコース認識残基の構造は β-グルコシダーゼのものと完全に一致した。一方、 β-プリメベロシダーゼには二糖に水素結合するための特別な二つのアミノ酸 (Ser473、Gln477) が存在した。ジグリコシダーゼは基質結合部位の僅かな構造の変化によって二糖配糖体に対する加水分解活性を獲得したと考えられる。
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© 2007 日本植物生理学会
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