抄録
我々はチョウマメの青色花弁においてテルナチンC5からテルナチンC3の生合成を触媒する、1-O-アシルグルコース:アントシアニン3'-O-グルコシド-6'''-O-アシル基転移酵素(3'AT; CtAT1)を同定した。31-及び24-kDaのサブユニットからなるこの酵素は、セリンカルボキシペプチダーゼ様アシル基転移酵素で、三つの推定N-グリコシル化サイトをもつ。この酵素遺伝子であるCtAT1をバキュロウイルス発現ベクターを用い、昆虫細胞Sf9で組換えタンパク質を発現させた。様々なテルナチン類を基質に用い、組換えCtAT1で酵素反応を行って得られた反応産物をLC/MSで分析した結果、CtAT1には3'AT活性だけでなく、アントシアニン5'-O-グルコシド-アシル基転移酵素(5'AT)、及びアントシアニン3'-O-(4-O-グルコシル-(6-O-p-クマロイル))グルコシド-アシル基転移酵素(3'AT2)活性があることが示された。このCtAT1の細胞内局在性を解析するためにGFPとの融合タンパク質を発現させるベクターを構築し、タバコBY-2細胞に形質転換した。CtAT1-GFP融合タンパク質を発現したBY-2細胞では、CtAT1は液胞内腔に局在することが示された。この結果より、CtAT1は液胞でポリアシル化アントシアニン生合成におけるアシル化反応を触媒することが示唆された。