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ソバ・ダッタンソバのアントシアニン生理機能解析の第一歩として、19品種系統の幼植物を材料にアントシアニンを同定し、蓄積含量の品種系統間差を調査した。ソバのアントシアニン含量の変異は0.67 - 1.17mg / g.d.w.で、構造はシアニジンをアグリコンとする単糖もしくは2糖配糖体であった。ダッタンソバのアントシアニン含量の変異は0.29 - 0.60 mg / g.d.w. で、構造は配糖体にガラクトースを含まないことを除きソバ同様であった。一方で、アントシアニン含量の変異を拡大するためダッタンソバに突然変異処理を行いアントシアニン高蓄積変異体を作出した。変異体のアントシアニン組成は通常品種系統と同様であったが、アントシアニン含量は50.5 mg / g.d.w.と高かった。また、暗所においては今回調査した品種系統はアントシアニンを蓄積しなかったのに対し、変異体は27.7 mg / g.d.w. のアントシアニンを蓄積した。続いて、アントシアニンの組織局在を調べるため子葉・胚軸の切片を調製し顕微鏡観察したところ、ソバ、ダッタンソバともに子葉や胚軸の表面部分に局在していた。このことから、ソバ幼植物のアントシアニンは他の植物の報告同様にUVスクリーン等の機能を持つ可能性が考えられる。今後は、今回見いだしたアントシアニン含量の異なる品種系統を用いてソバ・ダッタンソバのアントシアニン生理機能を解析する予定である。