抄録
ニチニチソウ(Catharanthus roseus )の培養細胞の増殖は、リン酸飢餓により停止し、長期のリン酸飢餓の後にもリン酸添加により細胞分裂が再開する。リン酸添加後最初におこる代謝反応を知るために、リン酸飢餓細胞に、33Piを与え、その行方を追ったところ、33Pの放射能は、ヌクレオチドに多く取り込まれ、それに続いて糖リン酸に取り込まれた。ヌクレオチド、RNA、タンパク質含量は、リン酸飢餓時に徐々に低下したが、リン酸添加後、これらの物質は増加した。特にヌクレオチド量は急激に増加し、HPLCで分析した結果、ATPなどのヌクレオシドトリリン酸とUDP‐グルコース量の増加が顕著であった。リン酸添加により、リン酸トランスポーター遺伝子の転写物レベルや、酸性ホスファターゼ、5’-ヌクレオチダーゼ、3’-ヌクレオチダーゼ、アデノシンヌクレオシダーゼなどの分解酵素活性は著しく低下したが、アデニンホスフォリボシルトランスフェラーゼ、ニコチン酸ホスフォリボシルトランスフェラーゼ、ニコチンアミダーゼなどのプリンやピリジンヌクレオチド合成のサルベージ酵素の活性は増加した。ニチニチソウ細胞のリン酸飢餓からの回復の初期段階に急激なヌクレオチドの合成が含まれることが強く示唆された。