抄録
チャ(Camellia sinensis)はツバキ(Camellia japonica)と同じツバキ科に属する植物である。チャ葉にはカフェインが存在するが、ツバキには存在しない。本研究ではチャと同じツバキ科植物であるツバキがカフェインを蓄積しない理由を明らかにすることを目的としている。
カフェインはキサントシンを出発物質とし、プリン環のN-7、N-3、N-1位の順にメチル化が起こることによって生成する。カフェイン生合成系はこのメチル化反応で制御されている。まず最初に、我々がチャから単離したN-3位とN-1位のメチル化を行うカフェインシンターゼ遺伝子(TCS1)の相同遺伝子がヤブツバキのゲノムに存在することを確認した。そのうえで、このTCS相同遺伝子の発現の有無について調べた。ノーザンブロット解析では転写産物の存在は確認できなかったが、RT-PCRによりTCS相同遺伝子の転写産物が存在することが明らかになった。RACE法によってTCS相同遺伝子の単離を試みたところ、2種類のTCS相同遺伝子が発現していることがわかった。これらのTCS相同遺伝子がコードするタンパク質は、チャのカフェインシンターゼと約90%の相同性を示した。