抄録
シロイヌナズナ花茎重力屈性の研究過程で単離された変異体zig zag(zig)は重力屈性に加え形態にも異常を示し、その原因遺伝子は小胞輸送関連因子Qb-SNARE VTI11をコードする。高等植物において重力感受等の高次機能に関わる小胞輸送の分子基盤を明らかにするため、zig-1の表現型を抑圧するサプレッサーの単離解析を行っている。zig suppressor 3 (zip3)は、zig-1の示す花茎の重力屈性及び形態異常を部分的に抑圧する劣性変異体である。また、zig-1において、重力感受細胞である内皮細胞のアミロプラストは液胞膜に包まれずに細胞上下に偏在したのに対し、zip3 zig-1では野生型と同様にアミロプラストが液胞膜に包まれて移動する細胞とzig-1様の細胞とが観察された。以上の結果からzip3変異はzigの表現型を細胞レベルにおいても部分的に抑圧すると考えられる。マッピングの結果、出芽酵母Vps35pのシロイヌナズナホモログをコードするAtVPS35bに変異が見つかった。Vps35pは液胞前区画(PVC)とゴルジ体の間の逆行輸送に関わるretromer複合体の構成タンパク質であることが知られており、相補性試験によりAtVPS35bがzip3の原因遺伝子と同定された。本発表ではzip3のzig抑圧の分子メカニズムについて議論したい。