抄録
アクアポリンに代表されるMajor Intirinsic Proteins(MIP)は、水だけでなくケイ酸やホウ酸など無電荷の低分子を透過するチャネルとして機能していることが明らかにされている。我々はイネにおけるホウ素輸送機構を明らかにするため、シロイヌナズナホウ酸チャネルAtNIP5;1と相同な遺伝子であるOsNIP3遺伝子群について解析を行っている。
AtNIP5;1と最も高い相同性を示すOsNIP3;1はホウ素欠除培地にさらすことより、根におけるmRNA蓄積量が約5倍上昇した。一方、ホウ素欠乏により、OsNIP3;1の発現が誘導された植物体をホウ素を含む培地に戻すと、発現量が通常条件と同レベルまで低下した。続いて、GFP-OsNIP3融合タンパク質をタバコ培養細胞において一過的に発現させたところ、細胞膜への局在を示した。さらに、OsNIP3;1プロモーター制御下でGUSを発現する形質転換体を観察したところ、根においては中心柱と外側の皮層とにGUSの染色が観察された。一方、地上部では維管束周縁部にGUSの染色が観察された。
これらの結果から、OsNIP3;1はホウ素欠乏誘導性のイネにおけるホウ酸チャネルとして、外部からのホウ素吸収および地上部での維管束からのホウ素移行に関与していることが推測された。