抄録
植物による土壌修復(ファイトレメディエーション)により、有害重金属であるカドミウム(Cd)を土壌中から効率的に回収するためには植物体の地上部に、より多くのCdを移行させる必要がある。植物体内のCdの長距離輸送には維管束組織である導管・篩管内に存在するタンパク質の関与が考えられる。我々は維管束組織に存在するCdに応答するタンパク質に注目し、これらの生理的機能を解析することにより植物におけるCdの長距離輸送機構の解明を目指している。本発表では特に篩管内に存在するCd応答性タンパク質について報告する。
供試植物としてはアブラナを用いた。約3ヶ月水耕栽培した植物に、48時間、30μMの濃度でCd処理を行った後、切断法により篩管液を採取した。この篩管液に含まれるタンパク質の濃度は約0.25 mg mL-1で、Cd処理区/無処理区の間で違いは見られなかった。これらの篩管液タンパク質を二次元電気泳動法により分離し、銀染色法による検出を行った。篩管液タンパク質の組成をCd処理区/無処理区の間で比較すると、Cd処理により存在量が変化する複数のタンパク質の存在が確認できた。これらのタンパク質についてPMF (Peptide mass fingerprinting)解析を行い、その同定を試みた。また、これらのタンパク質のCd結合性についても現在、検討を行っている。