日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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葉緑体遺伝子psbD光応答プロモーターの進化を追う
*新村 修一野添 幹雄松谷 茂椎名 隆
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p. 867

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抄録
被子植物の葉緑体は,2種類のRNAポリメラーゼと複数のσ因子を持ち,複雑な転写システムを発達させている。しかし,葉緑体プロモーターの進化に関しては,ほとんど研究例がない。本研究では青色光により特異的に活性化する光応答プロモーターpsbD LRPに注目し,その構造と光応答機能の進化を解析した。psbD LRPは被子植物に広く保存されているが,コケやシダ植物には見つかっていない。psbD LRPがどの進化段階で出現したかを明らかにするため,9種のシダ,17種の裸子植物についてpsbD遺伝子の上流配列を解析した。その結果、裸子植物のソテツ,球果,イチョウの3綱の植物はpsbD LRP配列を持つが,シダ植物には存在しないことが分かった。この結果は,psbD LRPが原始的な裸子植物であるソテツ綱で進化した可能性を示唆している。一方,興味深いことに,比較的進化した裸子植物であるグネツム綱ではpsbD LRPは失われていた。続いて,psbD LRPの光応答機能の進化についても検討した。明瞭な光応答性を示すシロイヌナズナと異なり,ホウライシダ,ソテツ,クロマツでは,明暗に関わらずpsbD転写産物が蓄積し,光応答性が観察できなかった。これらの結果から,被子植物への進化の過程で,psbD LRPのプロモーター配列の獲得が先行し,光応答機能の獲得が遅れて進化した可能性が示唆される。
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© 2007 日本植物生理学会
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