抄録
ハナスベリヒユ(Portulaca hybrid)の開花は温度と光強度の上昇によって誘導されることが知られているが,これらの環境シグナルの作用機構については明らかになっていない.我々は単離したつぼみを用いた開花誘導系を確立し,同植物の開花特性を解析した.12時間の前培養(25 ℃,暗所),2時間の開花処理(30 ℃,明所 {白色蛍光灯 54μE})を行う開花誘導系においては,花弁表皮細胞の縦方向の伸長は前培養中から始まり,開花処理により特に花弁基部において促進された.この系において,アクチン重合阻害剤,小胞輸送阻害剤,キナーゼ阻害剤は新鮮重量の増加を妨げることなく開花を顕著に阻害した.一方,前培養から30℃で培養することにより,光照射だけで開花を誘導できたが,開花の進行は温度変化を伴う場合に比べ若干遅くなった.この系においては青色光・赤色光単独でも開花は進行し,50 μE では青色光の方がより強い誘導効果を示した.当研究室においてアサガオの開花過程における細胞膜H+-ATPase活性の上昇が確認されていることから,ハナスベリヒユ花弁の粗ミクロゾーム画分の同活性をタンパク質量あたりで比較したところ,開花処理により花弁全体で約1.5倍の活性上昇が確認できた.現在同酵素活性の部位による違いや,開花阻害剤の影響を検討している.