日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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根域温度がイネの吸水・蒸散に及ぼす影響とアクアポリンの役割
*桑形 恒男村井 麻理濱嵜 孝弘桜井 淳子野並 浩
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p. 890

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抄録
植物は根を通して吸水し、その水を葉から蒸散させることによって、体内の水分バランスを保っている。根域温度の変化は、根の吸水機能の変化を通して、植物の水分状態や蒸散量に影響を及ぼす。人工気象室を用いた実験(気温25℃,日射条件は一定,湿度のみ変化)によって、根域温度の変化が水耕栽培イネ(あきたこまち)の吸水・蒸散におよぼす影響について調べた。蒸散量ならびに植物体の水ポテンシャル(葉の木部圧ポテンシャル)は根域温度(35~15℃の範囲)の低下とともに徐々に減少し、13℃以下の根域温度で急激に低下した。これは根域温度が低くなるにしたがって、植物体の通水コンダクタンスが低下し、根の吸水能力が低下するためである。また今回の実験条件においては、植物体全体のバルク気孔コンダクタンスは根圏温度や湿度条件の違いに関わらず、植物体の水ポテンシャルと1対1の関係で表された。
本実験で得られたイネの蒸散量の湿度と根域温度に対する依存性は、根域温度による通水コンダクタンスの変化と、気孔コンダクタンスと植物体の水ポテンシャルの関係を考慮した吸水・蒸散モデルによって、定量的に再現することができた。またイネの蒸散量が塩化水銀の添加により急減したことから、アクアポリンの活性の変化が、13℃以下の根域温度での植物体の通水コンダクタンスの低下に寄与している可能性が示唆された。
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© 2007 日本植物生理学会
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