抄録
世界の農耕地の約3分の1を占める石灰質アルカリ土壌では、土壌溶液中の可溶性の鉄の濃度が低い。そのため、植物が十分な量の鉄を吸収できずに、鉄欠乏となる。イネ科植物は、「ムギネ酸類」と呼ばれる鉄キレーターを生合成し、根圏に分泌する。分泌されたムギネ酸類は三価鉄をキレートし、「ムギネ酸類-三価鉄錯体」の形で根に吸収される。世界の主要穀物であるイネは、ムギネ酸類の分泌量が少なく、鉄欠乏ストレスにも弱い。一方、オオムギはムギネ酸類の分泌量が多く、鉄欠乏ストレスに強い。そこで、ムギネ酸類合成に関わるオオムギの遺伝子をイネに導入した「鉄欠乏耐性イネ」を作出した。3年間にわたる安全性評価試験を経て、6系統の形質転換イネについて、隔離圃場における生育試験を行った。
東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター内の隔離圃場に、富山県高岡市で採掘した貝化石土壌を運び込み、石灰質アルカリ土壌水田を作成した。2年間2回の生育評価試験により、圃場における鉄欠乏耐性を示す形質転換イネを選抜することに成功した。
また、隔離圃場内で栽培した非形質転換イネへの遺伝子の交雑についても検定した。検定に用いた129個体の種子からは遺伝子の交雑は確認されなかった。