抄録
植物の生育に大きな影響を与える環境要因のひとつにpHがある。生育環境中のpHの変動は栄養吸収や微生物の影響によるものが知られているが、我々は植物自身が生育環境のpHを適性化するのではないかと考え、シロイヌナズナを用いてpH調整能について検証を行ってきた。その結果、シロイヌナズナの種子や幼植物体が、酸性 ( pH4.2 ) あるいはアルカリ性 ( pH10.0 ) に調整した培地で生育すると培地を中和化することが明らかとなった。
本研究ではこの中和現象に着目し、植物の持つ3つの主要なプロトンポンプである細胞膜型 H+-ATPase、液胞型 H+-ATPase、液胞型 H+-PPase と、その他のプロトン輸送体の関与について、阻害剤添加実験や変異株を用いた実験から検証を行った。その結果、酸性からの中和は、バナジン酸添加で促進され、フシコクシン添加で抑制された。また、アルカリ性からの中和は、バナジン酸添加で抑制され、フシコクシン添加で促進された。これらのことは、細胞膜型 H+-ATPase がアルカリ性環境の中和化に機能することを示唆している。現在、液胞型 H+-ATPase、液胞型 H+-PPase、SOS1 などの欠損変異株を用いた解析を行っている。また、培地の中和に伴って見られるイオン濃度の変化も測定したのであわせて報告する