抄録
シロイヌナズナの病害抵抗性タンパク質RPM1はトマト班葉細菌病菌のIII型エフェクターAvrRpm1を間接的に受容して抵抗性シグナル経路を活性化する。抵抗性応答は感染細胞の急速な細胞死と周辺での抗菌性物質の蓄積からなる。これまでの精力的な遺伝学的研究にも関わらず、この経路で明らかになった遺伝子は少なく、シグナル伝達機構は未知の点が多い。我々は遺伝子の機能重複や致死性に依る遺伝学的手法の限界を克服する方法としてケミカルゲノミクスを導入した。これはある生命現象を攪乱する低分子化合物を利用して標的や関連因子を同定する手法であるが、化合物ライブラリーの利用により広範なタンパク質が標的可能となった。我々はシロイヌナズナ培養細胞がトマト班葉細菌病菌に対して過敏感細胞死を誘導することを見出し、大規模スクリーニングに適した細胞死アッセイ系を開発した。この実験系では感染細胞のみに焦点を当てた研究が可能となり、新規遺伝子や現象の発見を期待している。Chembridge社Diversityライブラリー10,000個とMicroSource社天然物薬物ライブラリー2,000個のスクリーニングを実施し、過敏感細胞死を阻害または亢進する化合物を多数単離することに成功した。これらは解析ツールとしてのみならず、環境負荷の少ない抵抗性賦活農薬としての応用が可能であり、現在個々の化合物について詳細な解析を進めている。