抄録
植物は病原菌の感染を認識すると、様々な抵抗性反応を示すことが知られている。我々はイネ培養細胞においてキチンオリゴマー等の病原菌由来のエリシターに応答して発現する2種のWRKY型転写因子(OsWRKY53、OsWRKY71)を単離し、解析を進めている。OsWRKY53、OsWRKY71の過剰発現株を用いたマイクロアレイ解析及び定量的 RT-PCR の結果、それぞれの過剰発現株において誘導されている遺伝子には共通のものが多く存在していることが明らかになった。また、GAL4 DNA-binding domain と OsWRKY71 を融合したプラスミドをエフェクター、GAL4シス配列の下流にホタルルシフェラーゼをつないだプラスミドをレポーターとして用い、イネカルス中でのトランジェントアッセイを行ったところ、OsWRKY71は植物体内でリプレッサーとして機能している可能性が高いことが示された。一方、OsWRKY53 は同様の解析によりアクチベーターとして機能していることが示唆されている。以上のことから、OsWRKY53とOsWRKY71はキチンエリシターにより誘導されるシグナル伝達において、協調的に病害抵抗性の発現を制御していることが予想された。共通の抵抗性遺伝子の発現誘導に、異なる転写制御活性を持つ WRKY 型転写因子が関与していることは非常に興味深い。OsWRKY71については、現在、デリーション解析を行い、リプレッサードメインの同定も試みている。