抄録
過敏感細胞死は、植物が示す防御応答の一つであり典型的なプログラム細胞死として知られている。過敏感細胞死のシグナルは、Hsp90、MAPK(NtMEK2-WIPK/SIPK)カスケード、さらにミトコンドリアへと伝達され、実行に至ると考えられるが、それら各ステップ間で機能する細胞死シグナル伝達関連因子の大部分はいまだ未同定のままである。
一方、多くの植物病原細菌は、タイプIII分泌系とよばれる分泌装置を用いて宿主細胞内へエフェクターと呼ばれる一群のタンパク質を注入する。エフェクタータンパク質群は宿主植物の持つ様々な防御システムをかく乱することが主要な役割であり、その中には過敏感細胞死抑制活性を持つものも数多く存在すると考えられている。我々は、ナス科の植物に深刻な被害をもたらす青枯病菌(Ralstonia solanacearum)のタイプIIIエフェクター群から、タバコに過敏感細胞死を誘導する系を利用して、過敏感細胞死抑制活性を有するものを複数単離した。現在、これらエフェクターの細胞死抑制機構を解析中である。今後、細胞死抑制エフェクターの植物側のターゲットを同定することにより、未知の細胞死関連因子の単離が期待される。