抄録
シロイヌナズナのゲノム情報を利用して基礎・応用両面の研究を進める上で、アブラナ科に属するハクサイは重要な対象作物である。当研究グループでは、ハクサイの遺伝子ライブラリーを作製して遺伝子資源の確保とその利用技術の開発を試みている。ハクサイ品種・京都3号(タキイ種苗より分譲)にサリチル酸、エテフォン、ジャスモン酸、重金属、紫外線および低温処理を行ってESTライブラリーを作製し、独立した2,166のESTクローンを得、1,820個のESTを搭載したハクサイESTマイクロアレイを作製した。これまでに、シロイヌナズナにおいて完全長cDNAマイクロアレイを用いて、病害および環境ストレス下におけるトランスクリプトーム解析を遂行し、比較ゲノム解析の基盤となるデータを蓄積している。そこで、ハクサイESTマイクロアレイを構築してハクサイの病原糸状菌アブラナ科野菜類炭そ病菌の感染に対する遺伝子の発現変動を解析し、得られた発現プロファイルとシロイヌナズナ・マイクロアレイデータベースを比較解析した。さらに、145個のハクサイとシロイヌナズナ間のカウンターパート遺伝子を同定し、遺伝子発現プロファイルの比較を行った。本発表では、ハクサイ研究の現状と今後の研究の展開について報告する。