抄録
我が国では、人工林の約44%をスギ(Cryptomeria japonica)が占める。スギ花粉症患者の割合は国民の1割を上回り、大きな社会問題となっている。最近、花粉を飛散しない雄性不稔スギが各地で発見され、花粉症対策への利用が期待されているが、スギ雄性不稔の分子機構は明らかにされていない。この分子機構を明らかにするためには、スギ花粉形成時に働く遺伝子群を解析する必要がある。本研究では、正常花粉を形成するスギ雄花の分化初期から花粉成熟期のRNAを用いて、均一化した完全長cDNAライブラリーを作製し、塩基配列情報(EST) を収集した。約20,000個のcDNAクローンに由来するESTのクラスタリング解析を行ったところ、10,466のUnigeneに分類された。BLASTXによる相同性検索の結果、約75%のUnigeneは既知の配列(UniProt、TAIR等)との相同性が認められた(E-value ≤ 1e-5)。今後は、これらのEST情報をもとにDNAマイクロアレイを作製し、スギ雄花における遺伝子発現プロファイルを正常個体と不稔個体で比較解析する予定である。