抄録
近年の分析条件の最適化や質量分析機器の性能の向上によって,多種多様な代謝産物を高分解能かつハイスループットに分析するメタボローム解析が可能となりつつある.しかし,様々な性質を持つ代謝産物をGC-MSなどの単一の手法のみで全て分析することは不可能である.そのため理化学研究所メタボローム基盤研究グループでは,GC-MSおよびLC-MS,CE-MS,NMRなどの手法を用いてメタボローム解析を行い,それらの結果を組み合わせることによって出来るだけ多くの化合物種を網羅することを目指している.その中で我々は,CE-TOF/MSを用いたメタボローム解析法の基盤確立を目指している.CE-TOF/MSはイオン性化合物を高分解能で分離・検出することができる装置であり,アミノ酸や有機酸,核酸,糖リン酸などの定量解析を得意としている.標品に対して3種のメソッド(カチオン,アニオン,ヌクレオチド)を用いて分析を行ったところ,現在計129種の化合物の定量が可能となった.また,シロイヌナズナ葉を同様にして分析した結果,48種類の化合物が定量でき,さらに未同定ではあるものの3332種のピークが検出された.現在,同定・定量可能な化合物種を増やすべく標品の分析を進める一方,いくつかのシロイヌナズナの変異株についてメタボリックプロファイリング解析を行っている.