抄録
近年、地球環境の変化に伴い、温暖化の一要因である二酸化炭素を固定する必要がある。さらに、欠乏が予測されうる石油エネルギーに代わるエネルギーが求められている。これら二酸化炭素の削減、ならびにエネルギー資源確保のため、樹木、特にユーカリの植生拡大を目標としている。我々は、劣悪な環境下でも高成長・高品質であるユーカリを開発するため、遺伝子組換えによる分子育種に取り組んでいる。新品種ユーカリを開発するにあたり、特に根の機能性向上(環境ストレス耐性、養分吸収向上)を目的としている我々は、根における目的遺伝子、新規有用遺伝子の評価技術が必要である。現在の問題点として、従来の方法で形質転換したユーカリでは、根の機能解析は一年以上の期間を要する。そのため、短期間で組換え体を獲得できるとされる毛状根に着目した。ただし、草本植物と異なり、木本植物のユーカリにおいて、遺伝子機能解析のための毛状根形質転換の知見、技術はほとんど得られていない。本研究では、迅速に目的遺伝子の評価を行う技術として、ユーカリ毛状根を利用した評価系を開発した。今回、ユーカリ毛状根において、アグロバクテリウムの感染期間、感染組織の培養条件を検討した結果、1~2ヶ月で形質転換した毛状根が得られた。現在、この評価系を利用し、ユーカリ根におけるプロモーター解析ならびに有用遺伝子の効果評価を実施している。