抄録
近年、酵母相同組換えを利用したDNAクローニング法が酵母two-hybrid法などの研究で、よく使われている。この方法により、目的のDNA断片を効率よくベクターに組込むことができる。特に、制限酵素とリガーゼを用いた従来のDNAクローニング技術では、複数のDNA断片や、数十kbp以上の大きなDNA断片をベクターに組込むことが困難であるが、この方法ではそういった断片のクローニングも容易にできる。しかし、非常に優れた方法であるにもかかわらず、従来の酵母相同組換えを利用した方法では、酵母複製起点のあるベクターにしかDNA断片をクローニングすることができなかった。そこで、最近、私たちは、植物の研究でよく使用されているpCAMBIAなどの酵母複製起点の無いベクターにも、酵母相同組換え利用して、DNA断片をクローニングする方法を開発した。ヘルパープラスミドpSU7とpSU23はベクターのKm耐性遺伝子と大腸菌複製起点の配列を利用して、酵母相同組換えにより、ベクターに酵母複製起点と選択マーカーを導入し、酵母で複製可能にする。そこで、ベクターと相同な配列を付加した目的DNA断片とベクターと共に、ヘルパープラスミドを酵母に形質転換すると、相同組換えにより、ベクターが酵母で複製可能になると同時に、そのベクターに目的のDNA断片が組込まれる。今回はこの方法の詳細な条件検討を行った。