日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第48回日本植物生理学会年会講演要旨集
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葉緑体チラコイド膜主要糖脂質の合成機構とその意義
小林 康一*太田 啓之
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p. S011

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抄録
葉緑体の膜脂質の80%はモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)、ジガラクトシルジアシルグリセロール(DGDG)の2つの糖脂質で占められている。特にMGDGは葉緑体チラコイド膜の50%を占め、地球上で最も多量に存在する膜脂質であるといわれる。我々はシロイヌナズナより3つのMGDG合成酵素遺伝子(atMGD1, atMGD2, atMGD3)を単離し、その発現や機能の解析を行っている。その内、atMGD2, 3が葉緑体外包膜に局在しているのに対し、atMGD1は内包膜に局在し、また、光合成組織で最も高い発現を示すことから、チラコイド膜の構築に主要に寄与していると考えられている。最近我々はatMGD1の完全ノックアウト変異体(mgd1-2)を単離した。mgd1-2は緑化できず、光合成活性も認められなかった。また、生育も非常に遅く、約4週で矮小なまま生育が止まった。mgd1-2の脂質解析をしたところ、MGDGの割合が極めて低くなっていたことから、atMGD1はMGDG合成の大半を担っていることが示された。この変異体では、胚発生の段階で既に生育阻害が起こっていたことから、atMGD1は発芽後の生育のみならず、胚発生時の形態形成にも重要な役割を担っていることが示唆された。本発表ではこのmgd1-2の解析をもとに葉緑体チラコイド膜の合成機構とその意義について議論したい。
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© 2007 日本植物生理学会
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