抄録
各種生物における遺伝子発現制御の特徴を解明する目的で、転写因子の比較解析を、H.sapiens=2689、C.elegans=998、D.melanogaster=1395、S.cerevisiae=322、N.crassa=445、A.thaliana=2465、O.sativa=2326、E.coli=271について行った。その際、従来の遺伝子ファミリーの種類及び数の比較に加えてDNA結合領域の特徴による分類カテゴリーによる比較も行った。動物でZinc-coordinating DNA結合構造を持つ転写因子が特異的に増幅している一方で、植物では更に様々なDNA結合様式(basic domain=bZIP及びHLH; HTH=HD, Myb, NAC; beta-scaffold factor=MADS,CCAAT factor; Antiparallel beta sheet domains = AP2/EREBP,B3)も利用されていることが判明した。植物間の比較では、シロイヌナズナは BED, bHLH, Co-like ZF, C2H2 ZF, Zz ZF, RAS ZF, DHHC, HD, LIM, Trihelix, PcG, AS2, PAZ,PLATZ が、イネでは bZIP, GRAS, YABBY ZF, Ring finger ZF, WRKY ZF, NAC, AP2/EREBP, B3,TUBBYが他者より多くの遺伝子種を持っていた。完全長cDNAのデータ等を用いた染色体へのマッピングによるAlternative splicing及びGene Duplicationの解析より、植物ではC2H2, WRKY, bHLH, MYB, NAC, B3がSegmental duplicationにより、 MADS, HDがTandem duplicationにより、 Ring finger, AP2/EREBPがAlternative splicingにより転写因子タンパク質の増幅を生じていることが明らかとなった。