日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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地衣類共生ラン藻の地衣体内環境と光合成
*岩崎 郁子小村 理行佐藤 圭介半場 祐子鈴木 英治佐藤 朗北川 良親原 光二郎小峰 正史山本 好和伊藤 繁
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p. 0014

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抄録
地衣類は菌類と藻類の共生体であり、乾燥耐性能を持つものが多く、環境の状態を知る「指標生物」と言われる。シアノバクテリアを共生藻(以下、共生ラン藻)とするモミジツメゴケ(Peltigera polydactylon)の共生ラン藻は、地衣体の上皮層近くの藻類層に分布し、光合成を行うのに都合の良い組織的環境が整っている。地衣菌との間で栄養塩類や光合成産物の授受が行われていると考えられている。
共生ラン藻が地衣菌から遊離して単独で生育することを制限するような因子の1つとして窒素源が考えられ、共生ラン藻を分離し、共生と非共生状態における生理学的特性を調べた。単離した共生ラン藻は、窒素欠乏環境でヘテロシスト特異的な蛍光スペクトルが確認されたが、地衣体内では確認されなかった。ヘテロシスト細胞は、光化学系IIがないか機能しないので酸素発生活性が見られず、系Iのみが機能し、嫌気的な環境を細胞内に作り出してニトロゲナーゼによる空気中の窒素固定を行う。
非共生状態にある単離した共生ラン藻について、酸素発生活性の光強度依存性を調べたところ、光強度の増加にともない活性は大きく低下したが、重炭酸イオン(HCO3)存在下では、強光による酸素発生活性の低下が押さえられた。これは、同様の一定時間の強光照射下で、地衣体の酸素発生活性能がほとんど低下しない傾向と類似していた。地衣体内の重炭酸イオンやCO2と光化学系の保護機能との関係が示唆された。
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© 2008 日本植物生理学会
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