日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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成熟葉への温度処理が若い葉の発生と光合成に及ぼす影響
*山内 俊新谷 考央野口 航寺島 一郎
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p. 0023

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抄録

植物の生育温度はその葉の形態や光合成系に大きな影響を及ぼすことが知られている。植物を低温で栽培すると、葉の柵状組織の層数は増加する。さらに葉面積あたりの光合成系の酵素量は増加し、最大光合成速度は高くなる。それに対して、高温で栽培した植物では、葉は薄く広くなり、葉面積あたりのクロロフィル量や最大光合成速度は減少する。近年、このような葉の形態学的および生理学的性質の環境への馴化が、その葉自身の環境だけではなく、下部の成熟した葉の環境によっても調節されていることが報告されている。Arayaら(2007)は、若い葉の光合成特性の詳細な解析に基づき、成熟葉の光合成系の酸化還元状態によって、若い葉の光合成が調節される可能性を指摘した。温度環境に対する葉の馴化も、若い葉自身ではなく、成熟葉の環境によって調節されている可能性がある。本研究ではヒマワリの1枚の成熟葉のみを低温処理し、低温処理されていない上部の若い葉の形態学的、生理学的性質を調べた。1枚の成熟葉を低温処理した個体の若い葉の柵状組織は厚く、個体全体を低温処理したヒマワリの葉の柵状組織と同様の形態を示した。さらに若い葉の光合成速度は、対照個体と比べて処理個体では高い値を示す傾向にあった。これらの結果から、若い葉の温度環境だけではなく、下部の成熟葉の生育温度環境も、若い葉の形態学的および生理学的性質に影響することが示唆された。

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© 2008 日本植物生理学会
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