日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第49回日本植物生理学会年会講演要旨集
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CAM植物葉内のCO2移動と光合成活性局在
*柳田 小百合野口 航寺島 一郎
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p. 0022

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抄録

CAM植物の葉では、日中、細胞間隙CO2濃度(Ci)が大きく上昇する。この上昇は、細胞内での有機酸の脱炭酸に由来するCO2が、細胞内から細胞間隙へと流出していることによる。CAM植物コダカラベンケイソウ(Kalanchoe daigremontiana)では、夜間のCO2吸収速度とリンゴ酸蓄積量に、葉の向(表)背(裏)軸間で差があることが知られている(Winter, 1987, 1989)。リンゴ酸蓄積量が異なると、Ciの上昇も向背軸間で異なることが予想される。本研究では、葉の両面表皮近くのCiを、各面のCO2交換速度と蒸散速度、気孔コンダクタンスから算出した。また、Ciと実際の光合成との関係を調べるため、自然条件下で葉を一定時間毎に採取し、表皮に平行な切片を作製し、各切片における光合成産物量の含有量を測定した。ガス交換速度の測定の結果、夜間のCO2吸収速度が大きい面で、日中の脱炭酸時におけるCiが大きかった。一面からCO2を放出し、もう一面からはCO2を吸収した時期も確認できた。以上のことから、Ciは葉の内部で一定ではなく、葉内に大きなCO2拡散抵抗が存在していることがわかった。一方、切片間における光合成産物の増減パターンには顕著な差は見られなかった。現在、切片のRubiscoやPEPCなどの酵素量を定量している。

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© 2008 日本植物生理学会
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