抄録
シロイヌナズナのアルミニウム耐性はリンゴ酸放出が主な耐性機構である。この放出は、コムギと同じようにリンゴ酸トランスポーターで制御される。その放出は、アルミニウム特異的であるが、これはリンゴ酸トランスポーター(AtALMT1)遺伝子の誘導とタンパク質の活性化の2重の制御を受ける機構であることが明らかになった。AtALMT1遺伝子は水素イオンで他のイオン処理よりも有意に誘導されるが、アルミニウム処理に比較すると有意に低い。一方、タンパクレベルの制御ではアルミニウム以外では速やかに不活性化されていると考えられた。タンパク質リン酸化及び脱リン酸化阻害剤を用いた実験から、両者の制御には、タンパク質リン酸化が関わることが明らかとなった。これは、AtALMT1遺伝子発現のシグナル伝達に関わる転写因子STOP1のイオン特異性と、発現解析の結果とも矛盾しない。この発現・活性化制御は、炭素ロスを最小化するためにも貢献すると考えられるが、プロモーターレポーターアッセイでは、基部では根内部のみで発現し炭素ロスを防ぎ、全体として障害部位(根端)のみを防御するために適した発現をすることが明らかとなった。尚、自然界から単離されたアルミニウム超感受性生態型では、このタンパク質がナンセンス変異していることもわかった。これは、AtALMT1が、環境ストレスのうち、Al耐性に特化した機能を持つことを示唆している。