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近年本研究室からオオムギのアルミニウム耐性に関わる遺伝子HvAACT1が同定された。この遺伝子はmultidrug and toxin excrusion (MATE)ファミリーに属しており、アルミニウム活性型クエン酸トランスポーターである。イネにおいてHvAACT1の相同遺伝子は3つあるが、今回はもっとも相同性の高い遺伝子(アミノ酸レベルで87%)であるOsFRDL1の機能について報告する。まずはOsFRDL1のTos-17の破壊株を取得して、アルミニウムによるクエン酸の分泌量を野生型と比較した。その結果、クエン酸の分泌量に差が認められなかった。次に、異なる鉄濃度(0.2μMと10μM FeSO4)で栽培したところ、0.2μM の場合のみ、破壊株の新葉にクロロシスが観察された。地上部の鉄濃度を比較した結果、破壊株の鉄濃度は野生株より低く、導管液中の鉄濃度とクエン酸濃度も野生型の約半分であった。また破壊株の根の中心柱に鉄の沈積が観察された。この遺伝子をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させたところ、クエン酸の外向きの輸送活性が認められた。この遺伝子は主に根で発現していて、その発現量は鉄の有無によってほとんど影響を受けなかった。これらの結果はOsFRDL1はオオムギのHvAACT1とは異なり、中心柱へクエン酸を輸送するために必要なトランスポーターであることを示している。このトランスポーターは鉄をクエン酸との錯体の形態で地上部に輸送するのに必要である。