抄録
タバコ培養細胞を、カルシウムとショ糖を含む溶液(Ca培地)に懸濁し、アルミニウム(Al)処理(最長18時間)を行うと、処理開始後6時間目までに細胞伸長阻害が、6時間目以降に活性酸素誘発、カロース分泌、細胞死(ただしCa培地から増殖培地へ懸濁後に誘発)が見られる。本研究では、伸長阻害の機構を解析するとともに、伸長阻害とそれ以外の応答反応との関係を解析した。細胞伸長の程度は水吸収(新鮮重)の増加で評価した。処理開始後3から6時間以降に、Al未処理細胞(コントロール)では、新鮮重の増加とともに遊離糖含量の増加と浸透濃度の増加がみられるが、Al処理細胞では、これらの増加が見られなかった。さらに、Al処理細胞では、14C-ショ糖の吸収が、3時間目以内にコントロールの40%まで阻害された。一方、タバコ細胞を糖欠乏培地(ショ糖の代わりにマンニトールを含むCa培地)に懸濁して18時間反応させると、遊離糖含量ならびに新鮮重の増加が、Al処理細胞と同程度に抑制されたが、活性酸素、カロース、細胞死の誘導はほとんど見られなかった。従って、タバコ細胞の水吸収(細胞伸長)はショ糖の吸収に依存すること、Alは細胞のショ糖吸収を阻害することで水吸収を阻害すると思われこと、Alによる活性酸素、カロース、細胞死の誘導は、ショ糖吸収阻害だけでは誘発されず他の細胞因子との相互作用が必要であることが、明らかとなった。