抄録
Eleocharis viviparaは北米南東部に自生するカヤツリグサ科ハリイ属の植物であり、乾期には陸生しC4光合成(NAD-リンゴ酸酵素型)を、雨期には沈水しC3光合成を行う。同一種内で、C3とC4光合成の可逆的転換を行うので、C4光合成の成立に必要な遺伝子やタンパク質の探索を行うのに好適な植物材料である。当面、本植物のC4型PEPCの遺伝子発現や活性制御の機構の解明を目指しているが、研究の初期に、C4型PEPCの植物組織からの抽出率が、本植物やトウモロコシなどについての従来法では著しく低いことがわかった。そこで本研究では、新たな抽出法を開発することを目的とした。抽出用溶液への添加物として、従来はウシ血清アルブミンやグリセリンなどが用いられてきたが、今回スキムミルクを用いてみた。その結果、抽出率はこれまでより飛躍的に、約50-100倍、改善されることがわかった。抽出液の最適組成、有効成分などについて検討し確立した方法を報告する。イムノブロッティングにおいてブロッキングに用いられるのと同様、スキムミルクはPEPCが繊維質に富む茎の成分に疎水的に吸着されるのを防いだためと考えられる。